第151章

『吉崎様……』

待ちわびていた運転手が小走りで駆け寄り、血の気の引いた顔を見て眉をひそめると、そっと身体を支えた。

吉崎直子は奥歯を噛みしめ、深く息を吸う。胸の底からせり上がるものを無理やり押し沈め、いつもの冷えた無表情を貼り直した。

『車、出して。家へ』

『かしこまりました』

黒いベントレーが大通りを疾走し、ほどなく御景荘園へ滑り込む。

屋敷は静まり返っていた。物音ひとつない。気分のせいか、それとも別の何かなのか――とにかく、孤独だけがいつもより輪郭を持って迫ってくる。

直子はソファの背を指先でゆっくり撫でた。掌の下の革の感触が、かえって記憶の引き金になる。脳裏の奥で、かつて...

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