第16章

吉崎由紀の瞳が、すっと陰った。吉崎直子と羽島浩介が少しでも関わるなんて、絶対に許せない。

せっかく追い出したのに。吉崎直子は、陽の当たらない人生を這いつくばっていればいい。権力者に縋る道など、与えるわけにはいかなかった。

とはいえ、羽島浩介は長年女の影がない。あの吉崎直子に、そう簡単に骨抜きにされる男にも見えない。

なら――火をくべるだけでいい。

由紀は無言でスマホを取り出した。

二時間後。吉崎直子はスタジオへ戻ってきた。

Queenの工房は世界的に名が通っている。腕利きのデザイナーが揃い、受注量は他の工房の何十倍。年中、仕事が途切れない。

吉崎直子も用がなければ顔を出し...

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