第160章

彼女は、あの給仕が何か囁いたのを見た。次いでポケットから小さな何かを取り出し、素早く神崎晴子の手のひらへ押し込む。

神崎晴子は手元をちらりと確認した瞬間、口元に毒々しい笑みを浮かべた。

そしてそれを、手早く自分のクラッチへ滑り込ませると、何事もなかったかのように――再び喧騒の宴へ紛れ込んでいった。

吉崎直子は、遠ざかっていく背中を見送りながら、考え込むように目を細める。

今の給仕は誰だろう。どこかで見た気がする。

眉間に皺が寄る。どうにも、表向きの印象どおりの話ではなさそうだった。

思考が渦を巻く中、彼女は従業員用の通路へ視線を上げ、音もなく給仕が消えた方向へ追いかけた。

ハイ...

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