第174章

彼の背中を見送った瞬間、吉崎直子の胸の奥がふっと温かくなる。だが次の秒には我に返り、彼女は慌てて後を追った。

ほどなくして一行は、目的の地下入口へ辿り着く。

――が。

駆け込んだ先に待っていたのは、想像していた罠でも待ち伏せでもなかった。地下の空間は、拍子抜けするほど空っぽ。

ただ、実験台と机だけがひどく散らかり、ここに誰かがいた痕跡を乱暴に主張している。

それを見た吉崎直子の瞳が、すっと沈んだ。

『ボス、逃げられてます』

白坂が部下を連れて一通り確認してきたのだろう。険しい顔で戻り、そう報告する。

吉崎直子は答えない。

足元のガラス片や紙屑を避けながら、彼女は散乱の中心―...

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