第180章

その頃、吉崎家の別荘は、まさに大混乱だった。

リビングにはいくつものスーツケースが広げられ、使用人たちはあれこれ指示されて右往左往している。

鈴村紀子は書類と宝飾品を乱暴に詰め込みながら、せかすように声を張り上げた。

『早く、早く! 遅れたら間に合わない!』

吉崎広峰はソファに沈み込み、電話をかけ続けていた。だが何本かけても繋がらない。苛立ちが頂点に達したのか、彼はスマホをソファへ叩きつけ、吐き捨てる。

『くそっ! 肝心な時に、まるで役に立たん!』

鈴村紀子は顔面蒼白のまま、声を震わせた。

『今さらそんなこと言っても仕方ないでしょ。由紀はもう完全に当てにならないのよ。私たち、今...

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