第21章

神崎晴子の笑みが、わずかに引きつった。

「わたしなんかが、吉崎さんとピアノの腕を比べるだなんて……。でも、その紫珠はお父さまが長年大事にしてきた品でしょう? 別の物に替えたほうが……」

羽島お爺さんは不機嫌そうに手を振った。

「いや、これをあの子にやると決めたんだ。どれだけ高かろうが関係ない。吉崎さんの命の恩には、到底及ばん」

そう言われ、神崎晴子は気まずそうに唇を結んだ。

彼女は改めて吉崎直子へ視線を向け、ため息まじりに言う。

「吉崎さん、気を悪くしないでね。ただ……受け取ったら、かえって重荷になるんじゃないかって。だって、これはうちのお父さまが一番好きな物なの」

「重荷には...

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