第32章

吉崎直子は、ほとんど一秒で嗅ぎ分けた。

このスープには少なくとも五種類の毒性成分が混ざっている。どれも肌を荒らす植物由来の抽出物――。

面白い。

視線を上げると、神崎晴子の「早く飲め」と言わんばかりの期待に満ちた目と真正面からぶつかった。

この女は、直子が一口飲んで、顔が見られないほど爛れる瞬間を待っているのだろう。

直子は胸の内で小さく鼻を鳴らし、何食わぬ顔で鶏スープの椀を羽島浩介へ差し出した。

唐突な動きに、席の空気がぴたりと止まる。

羽島浩介が首をかしげる。

「……どうした?」

「鶏スープ、苦手なの」

直子は表情一つ変えず、淡々と言った。

「この匂い、ちょっと無理...

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