第52章

吉崎直子が姿を現した途端、白石夢子は露骨に顔色を変え、せかせかと駆け寄った。

「吉崎直子!」

だが直子は相手にする気もない。夢子をあっさり避け、そのまま車のドアを開けて乗り込もうとした。

夢子は素早くドアに手をかけ、閉めさせない。真正面から睨み据える。

「話しかけてるのよ。聞こえなかったの?」

「聞こえないわね。犬が吠えてる声しか」

直子は眉を上げ、氷みたいな目で夢子を見た。

「……もしかして、それあんた?」

夢子の顔が引きつる。奥歯をぎり、と噛みしめ、それでも無理やり落ち着こうとした。

「いい? 吉崎直子。あたしがあなたの腹の中を知らないと思わないで。何を狙ってるか、ぜん...

ログインして続きを読む