第64章

羽島浩介には、あの老人がまた何を企んでいるのか、さっぱり分からなかった。

電話を切るとき、祖父はこう言ったのだ。

『おまえに渡したいものがあるそうだ。今すぐ一度戻ってこい』

吉崎直子も不思議に思った。

ついさっき、羽島お爺さんとは顔を合わせたばかりだったのに。

別荘地へ戻ると、羽島家の執事に案内されて応接間へ入る。そこで初めて、羽島お爺さんだけではないと気づいた。

白髪の老人が、もう一人いた。

痩せ細り、唇は青白い。

ゆったりした黒のシャツとスラックスの中で、身体は痛々しいほど小さく見えた。背もやや丸まっている。

それでもなお、身にまとう気品だけは少しも損なわれていない。

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