第65章

吉崎直子は足をふと止め、反射的に振り返った。

林原寧月のオフィスから男が出てくる。きちんとした濃いグレーのスーツに身を包み、片手をポケットへ。若く整った顔立ちなのに、どこか不真面目なチンピラ臭が抜けない。

男は真っすぐこちらへ歩み寄り、吉崎直子の手首のブレスレットを食い入るように見つめた。

『聞いてるだろ。このブレスレット、どこで手に入れた?』

吉崎直子はちらりと男の胸元の社員証に目を落とす。

データ部マネージャー、林原玄也。

林原澄子から、伯父さんには子どもが二人いると聞いていた。従兄が林原玄也、従姉が林原寧月――。

なら、目の前のこいつが「従兄」らしい。

しかも、躾の入っ...

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