第72章

「吉崎直子! それって私怨でしょ! このコンテストを本気でやってるの?!」

声を荒らげる彼女を見下ろしながら、吉崎直子は鼻で嗤った。伏せた眼差しの奥に、濁った闇が沈む。

「私怨? そう言うのね」

「じゃあ聞くけど、24番の作品だって『ある巨匠』の作品と似てるって言ったら?」

「この絵、全体の雰囲気も核になってるテーマも、5年前に引退したデザイン界の泰斗・青村文貴先生の代表作『希望』と、ほとんど同じだと思わない?」

「青村文貴」――その名が出た瞬間、客席の審査員席がざわっと沸騰した。

「だよな! だから見覚えあったんだ! これ『希望』の簡略版って感じじゃね?!」

「うん。線の流れ...

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