第75章

平村俊が書類を抱えたまま駆けつけると、目に飛び込んできたのはその光景だった。思わず息を呑み、声が漏れる。

「……その手……!」

「救急車呼んで」

吉崎直子は子どもを彼の腕の中へ押しやり、驚くほど落ち着いた声で続けた。

「それから警察も」

「わ、分かった……!」

平村俊は床に散らばった書類など目もくれず、目を赤くしながら必死にうなずいた。

その頃、どこかの喫茶店の個室では、吉崎由紀が『いい知らせ』を待っていた。

ほどなくして、スマホがけたたましく鳴り出す。彼女は慌ててカップを置き、端末を取った。

受話口の言葉を聞き終えるころには、口角がゆっくりと持ち上がっていた。

「どうだ...

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