第77章

その言葉に、吉崎直子はぴたりと動きを止めた。

そこまでは、さすがに考えていなかった。

だが、すぐに袖をつまみながら言い返す。

「長袖を着てるし、この上からもう一枚ガードすれば、誰にも気づかれないわ」

「誰かにぶつかられたらどうする。傷がまた開いたら?」

男は眉間に深い皺を刻んだ。

「その時は、また縫えばいいでしょ」

返答は早い。声音も、どうでもいいと言わんばかりに淡々としている。

それを聞いた羽島浩介は、怒りのあまり逆に笑ってしまった。

……なのに、目の前の少女にはどうにも手が出せない。

結局、深く息を吐いて半歩ぶん身を引く。

「俺が送る」

「いい。平村俊がもう向かっ...

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