第82章

その日の午後、吉崎由紀は家のツテを使い、病院の後方部門に勤める遠縁の親戚にあっさり連絡をつけた。そしてその手から、VIP病棟の担当看護師に関する資料一式を受け取る。

ざっと目を通しただけで、狙いはすぐ定まった。

小坂雫。若い看護師だ。まだ衛生看護科を出て間もない。家は苦しく、母親は尿毒症を患っていて、週に何度も透析が必要だった。金がいくらあっても足りない。

個人情報を丁寧に読み直した吉崎由紀は、口元だけをわずかに吊り上げると、その場で電話をかけた。面会場所は、病院裏口近くのカフェ。

吉崎由紀が着いたとき、小坂雫はすでに窓際の席にいた。ぼんやりとテーブルを見つめ、眉間には疲労とやつれが...

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