第84章

大宮記者の目が、かすかに揺れた。表情には出さず、探るように口を開く。

『ただ……いま吉崎さんのほう、ご都合は大丈夫でしょうか』

『たぶん、平気だと思います』

吉崎由紀はこくりと頷いた。瞳の奥に、言いようのない色がちらつく。

『昨夜、病院にいる知り合いから聞いたんです。姉の具合、あまり良くないみたいで……電話しても出なかったし、心配で』

『もしご一緒いただけるなら、万が一のときにも立ち会いになっていただけますし』

大宮記者は腹の底で合点がいった。今日はたぶん、なかなかの『絵』が撮れる。

『分かりました』

ほどなく車は、病棟の建物の前で止まった。吉崎由紀は勝手知ったる様子で、大宮...

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