第95章

『別に』

林原寧月は優雅にコーヒーカップを持ち上げ、ひと口含んでから、感慨深げに言った。

『ただ、ちょっと惜しいなって思っただけ。だって――吉崎直子がいなければ、今のあなたがこんなにみじめなことにはならなかったでしょう?』

『そういえば、わたしもあの子は好きじゃないの。田舎育ちの子が戻ってきた途端、おじいさまと叔母さんの寵愛をかっさらって。いったい何を吹き込んだんだか……』

吉崎由紀は、言外の含みを聞き取った。瞳がすっと揺れる。

『……林原さんも、吉崎直子が嫌いなんですか?』

『嫌い?』

林原寧月は唇を歪め、冷たい笑みを作った。

『嫌いどころじゃないわ。目の前から――完全に消...

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