第96章

羽島浩介の瞳がふっと陰るのを見て、吉崎直子は視線を揺らした。理由もなく落ち着かなくなり、そっと顔を背ける。

『……ありがとうございます』

『それじゃ、行こうか? チャリティーオークション、もう始まるだろ』

彼女の動揺に気づいたのか、男はくすりと笑っただけで、それ以上は何も言わない。代わりに、腕を差し出してきた。

その仕草に、直子は一瞬ためらう。けれど結局、軽く手を乗せた。

ほどなく二人は、外に待たせていたロールスロイスへ乗り込み、市内で名高い七つ星ホテルへ向かった。

ホテルのエントランスには、すでに記者がずらりと待ち構えていた。望遠レンズを構え、撮れるうちに撮って素材を押さえ、す...

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