第98章

オークションが正式に幕を下ろしたのは、夜10時を少し回った頃だった。

招待客たちは三々五々引き上げるか、そのまま主催者の開くパーティー会場へ流れていく。

羽島浩介は席を立ち、吉崎直子の腕を支えながら自分も立ち上がった。

「俺たちも行こうか」

直子は小さくうなずき、その腕にそっと自分の手を添える。二人は肩を並べ、宴会場の大扉へ向かった。

夜の帳へ踏み出そうとした、その寸前。

異変は、唐突に起きた。

「直子! 直子、行かないでくれ! 俺を捨てるのかよ!」

薄汚れた服をまとい、痩せこけた男が、脇の柱の陰からいきなり飛び出してきた。狂ったような形相で、吉崎直子へ飛びかかる。

あまり...

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