第133章 エンジェル

「孤児院?」

 彼女にそんな過去があったとは思いもしなかった。胸の奥が、きゅっと痛む。

 葉山ゆうは北条寒生の腕の中でこくりとうなずき、淡々とした声で言った。

「うん。一度、弟の明が自転車にぶつかられちゃって。継母にあたしのせいだって責められて、それで孤児院に入れられたの」

 北条寒生は眉をひそめ、目の奥に冷たい光を走らせた。

 この世には、底意地の悪い人間などいくらでもいる。

 だが、自分の女を傷つけるなら――その報いは受けるべきだ。

「ある夜、孤児院で急に火事が起きてね。そのとき、あたし、お兄ちゃんを一人助けたの」

「お兄ちゃん?」

「うん。あたしより何歳か上で、孤児院...

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