第143章 酒の後

北条寒生は通話を切ると、ズボンのポケットから指輪のケースを取り出した。開けはしない。ただ指先で弄びながら、ぼんやりと見つめる。

やがてスマホを手に取り、メッセージを一本送った。今夜はゆっくり休め。明日は松本特別補佐に迎えに行かせる。

今から自分が駆けつけたところで、彼女に余計な重圧を与えるだけだ。下手をすれば、自分は彼女を信じていないのだと思わせてしまう。

せっかくのプロポーズは流れてしまったのだ。だったら、C市でゆっくり休ませたほうがいい。次はもっと万全に準備してから――。

「病院へ」

そう言って、北条寒生は目を閉じた。

結局のところ、何より優先すべきは彼女の気持ちだった。

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