第164章 薬盛られた

 エレベーターが故障していて、加島欧は彼女と一緒に階段を上ることになった。

 階段室は薄暗い。葉山ゆうはスマホのライトを点けて足元を照らす。

 闇の中、光はその一点だけ。

 空気はしんと静まり返り、聞こえるのは互いの呼吸ばかりだった。

「すみません。階段まで付き合わせてしまって……このあと、また下りないといけないのに」

 葉山ゆうが申し訳なさそうに言う。

「気にしないで」

 彼は彼女と一緒にいられるだけでいい。階段だろうと、加島欧は疲れを感じなかった。

「段差、ちょっと高いですから。気をつけ——きゃっ!」

 注意したその瞬間、葉山ゆう自身が足を踏み外し、体が後ろへと傾く。

...

ログインして続きを読む