第167章 手に入れられない男はいない

 時間が止まったかのようだった。

 葉山ゆうが涙を拭ったそばから、またたく間に瞳が潤んでいく。

 彼の胸に飛び込んで、しがみついて、声を上げて泣きたかった。その一瞬、本当にそうしてしまいそうだった。

 けれど……結局、彼女はこらえた。

 深く息を吸い、視線を引きはがすように逸らして、その場を離れようとする。

 すれ違いざま、男がいきなり彼女の手首をつかんだ。まるで心臓そのものをわしづかみにされたみたいで、葉山ゆうの身体がぶるりと震える。

 「何をしに来た」

 北条寒生の声は静かだった。静かすぎて、かえって冷え冷えとしている。

 痩せていた。やつれていた。落ちくぼんだ眼窩のせい...

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