第172章 北条さん、お願い……

 また来たの?

 加島敏は反射的に身をこわばらせた。

 こんな緊張感、別に抱く必要なんてない。葉山ゆうなど気にかける価値もないし、そもそも自分の敵と呼べる相手ですらない。

 それなのに現実には、危機感がぞわりと込み上げた瞬間、全身がたちまち臨戦態勢に入っていた。北条寒生の腕に自分の腕を絡め、まるで所有権を誇示するみたいに抱きつく。

 葉山ゆうの視線が、寄り添う二人の姿に落ちる。

 胸が、ずきりと痛んだ。

 ずっと心臓を握り潰されているような息苦しさ。その見えない手が、また胸の奥を引き裂き始める。

 もう別れている。嫉妬する資格なんてない。それでも胃の奥に広がる酸っぱい熱が、今に...

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