第178章 今まで好きになったことはない

 加島敏の剣幕に押され、さっきまで胸の奥でくすぶっていた苛立ちも、葉山ゆうの中からすっと消えた。

 彼女は加島敏をまっすぐ見つめ、言葉を一つひとつ区切るように、はっきりと言い返す。

「私、浮気相手なんかじゃありません。だって寒生さんは、一度だってあなたのものだったことなんてないから。寒生さんはあなたのこと好きじゃない」

 その言葉は、加島敏の頬を平手で打ったも同然だった。

 しかも、それを恋敵の口から突きつけられたのだ。これ以上ない屈辱だろう。

 さっきまで優位に立ったつもりで、浮気相手を糾弾する側の顔をしていた彼女の表情に、ぴしりとひびが入る。顔色が赤くなったかと思えば、次の瞬間...

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