第211章 結婚式中止

加島欧が一晩中どこか上の空なのに気づいていながらも、江口美月の胸の高鳴りは少しも損なわれなかった。彼女を惹きつけているのは「加島家の跡取り」という肩書きではない。加島欧、その人自身だった。

御曹司なら見慣れている。だが、加島欧ほど穏やかで品のある紳士はそういない。内側から外側まで、名家の子息らしい優雅さがにじみ出ている。

江口美月は、心の奥で決めていた。

この人とじゃなきゃ、結婚しない。

夕食が終わっても、加島欧は何ひとつ踏み込んでこない。美月は意を決し、声を震わせた。

「欧さん……あ、あの。連絡先、交換しませんか」

「すみません」

返ってきたのは、それだけ。

すみません……...

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