第72章 彼女を逃がさない

昨日、葉山ゆうはあれほどきっぱり言い切った。けれど最終的に決めるのは、やはり北条寒生だ。

まるで逃げ場を失った小さな蟻のようだった。身動きひとつ取るのも苦しい。

北条寒生と関わって、いちばん骨身に染みて思い知らされたこと。

それは、自由がどれほど尊いものかということだった。

8時になっても、スマホは鳴らない。

葉山ゆうは会社を出ると、10分ほど歩いてラインマンションへ向かった。

彼女の住む棟には、北条グループでマネージャー以上の社員が多く入っている。そのぶん環境もよく、高級マンションに分類される物件だった。

葉山ゆうは部屋のドアを開け、少し目を見張った。

築浅らしく室内は新し...

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