第79章 キスして

「北条寒生、離して」

「いいから手を放して。聞こえてる?」

北条寒生はカードキーをかざしてドアを開け、彼女をそのまま部屋へ押し込んだ。

葉山ゆうがようやく足元を立て直した、その瞬間。反応する間もなく、ドアが「バン!」と閉まる音がして――次いで彼女は玄関で壁際に押さえつけられた。頭の中で警報が鳴り響く。

心臓がひゅっと縮む。

「なにするの?」

「酔ってるんだ」

男が覆いかぶさる。耳元へ熱い息を吹きかけられ、濃い酒の匂いが鼻を刺した。

暗闇の中、掠れた声は弦を鳴らすみたいに艶を帯びている。

「酔ったフリしないで」葉山ゆうは彼を押した。さっき掴まれた手はやけに強かったし、足取りだ...

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