第99章 料理

「そっちが顔を寄こせって言ったんだろ」

 北条寒生は酒なんて一滴も飲んでいない。なのに、その声には少しからかうような響きが混じっていて、ほろ酔いみたいに甘く、どうしようもなく可愛がる響きがあった。

 真っ赤になった頬は、まるでりんごみたいで愛らしい。さっきはキスなんてするんじゃなく、いっそひと口かじってしまえばよかった。

 自分が好きになった女。

 ふわふわして、やわらかくて、無邪気でわがままな小娘みたいな子だ。

 何をしていなくても、北条寒生にとってはそれだけで十分すぎるほどの誘惑だった。

「煮込んでやる!」

 葉山ゆうは怒りで顔を真っ赤にして、小さな手で彼の胸を押し返す。

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