第100章 愛してる

予想に反して、日向茜は異様なほど冷静だった。

今夜、この場所に佐伯樹はいない。母も医療チームによって密かに移送され、セーフハウスに残っているのは彼女ひとり。

真田修一がどれほど執念深くここを嗅ぎ当てたところで、もう彼女を屈服させる「弱み」はない。

機体のハッチ脇で、真田修一が拡声器を受け取った。

低く掠れた男の声が、風雨とローターの轟音を押し潰し、閉め切った扉と窓を貫いて室内へ鮮明に届く。

「日向茜。約束を破って先に逃げたのは、お前と佐伯樹だ」

「小島は無事だ。基地は稼働を取り戻し、島の人間にも被害は出ていない」

「最後の機会をやる。俺と来い」

日向茜はしばらく彼を見つめ、ふ...

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