第42章 過去との別れ

蘭川一号、2階の浴室。

熱い湯がタイルをばしゃばしゃと打ち、蒸気が空間いっぱいに立ちこめる。鏡には白く曇った水気が一面に張りついていた。

日向茜は鏡の中の自分にちらりと目をやり、すぐ視線を外した。

排水口のステンレスの目皿が、黒っぽい塊で完全に詰まっている。水は足の甲まであふれていた。

彼女は身をかがめ、そこに絡みついたものをまとめてすくい上げる。

濡れそぼった髪が、ひと束、またひと束と指のあいだからぬるりと滑り落ちた。大量の長い髪。泡を絡め、びっしりと。

分子標的薬は副作用が強い。脱毛は休薬後2週間から3週間ほどで、まとまって一気に出る。

化学療法の副作用だと、頭ではわかって...

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