第57章 随分楽しそうだったな?

日向茜は、彼の襟元に留まる銀色の校章に目を留めた。視線を下へ滑らせ、腕に巻かれた電子時計で止まる。医学生が実験室でよく使う、あの計時用のモデル。

「A大の人?」

戸田己の目がぱっと輝き、一歩前に出る。

「先輩もA大なんですか?」差し出したのはオレンジジュースのグラスだった。「俺、工藤遠正先生の基礎研究班の学生です」

指導教員の名を聞いた瞬間、日向茜の全身を縛っていた警戒が、ふっと緩む。

彼女はオレンジジュースを受け取り、手の中で静かに持った。

「日向です。私も昔、工藤先生のところにいました」

戸田己は途端に口が軽くなる。数言の挨拶を交わしただけで、表情が落ち、声の調子も沈んでい...

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