第74章 折れる

真田グループ本社ビル。

黒いベントレーが回転式のガラス扉の前で止まった。ボディガードがドアを開けると、日向茜は保温容器を提げて降り、まっすぐエントランスへ向かう。

1階のゲートに差しかかったところで、ちょうど役員専用エレベーターから出てきた林田知代と鉢合わせた。

林田知代はオーダーメイドのキャリアスーツに身を包み、メイクも隙がない。手には某ラグジュアリーブランドの限定ランチボックス。だが顔色は冴えず、足取りには苛立ちが滲んでいた。

二人はゲート前で足を止める。

「日向茜。ほんと、しつこいわね」

林田知代の視線が、茜の手元のありふれたステンレスの保温容器を素早くなぞる。口元が嘲るよ...

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