第76章 子どもが欲しい?

「……そうじゃない?」日向茜は顔を向け、まっすぐ男の視線を受け止めた。「あなたが堕ろさせた、あの子だって……命だった」

真田修一はハンドルを握る手にぐっと力を込めた。手の甲に青筋が浮き上がる。

ちょうど前方は赤信号。

ブレーキが踏み抜かれ、マイバッハが横断歩道の手前で急停止した。

二人の身体が慣性で前へ投げ出され、次の瞬間、シートへ叩き戻される。

「日向茜……わざわざそんな言い方をするのか」真田修一の声が沈んだ。

日向茜は俯き、自分の青白い手の甲を見つめる。

「……すみません」言い直すのは驚くほど早かった。「私が言葉を間違えました。真田社長の機嫌を損ねたのは、私の落ち度です」

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