第8章 支払えない値段

救急処置室の上に灯っていた、刺すように赤いランプが消えた。

金属製の扉が、左右へ押し開かれる。

長島医師が重たい足取りで出てくる。ぬるりとした感触のラテックス手袋を外しながら、廊下で待ち構えていた日向茜へ視線を向けた。

「蘇生はできた」

一晩じゅう張り詰めていた背筋が、ようやく折れた。日向茜は冷たいタイル壁に背を預け、そのままずるずると崩れ落ちる。

だが、長島医師は息をつかせる間も与えない。間髪入れず、続きが落ちた。

「ただし、喜ぶのは早い。搬送が遅すぎた。脳が長時間、虚血と低酸素にさらされてる。命はつないだが、深昏睡だ。臨床的には……目を覚ます確率は限りなく低い」

手袋を黄色...

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