第93章 終わった……のか?

海風が耳の奥まで吹き込み、次いで骨身に染みる寒気が襲った。

公海へ落ちた刹那、水圧が胸郭を叩きつけ、海水が口と鼻から容赦なく流れ込む。日向茜は抵抗をやめた。身体の重さが抜けていくのに任せ、海底へ沈んでいく。

失血がもたらす眩暈が波のように押し寄せ、肺の酸素はみるみる尽きていった。

――そのとき。

暗がりから、黒いタクティカルグローブの手が伸び、日向茜の腕を鷲掴みにする。ぐい、と引き寄せられ、貨物船の船底――視界の死角へと引きずり込まれた。

黒いダイビングマスクが、日向茜の顔に押し当てられる。

純酸素が肺へ流れ込み、日向茜は荒く息を吸った。暴れていた心臓が、ようやく落ち着きを取り戻...

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