第95章 最後の糸

「治ったよ」佐伯樹が、ふっと笑った。

日向茜は言葉を失う。

さっきまで彼は、太郎――あの特定の血液型の適合がなければ助からない、と言っていたはずだ。

佐伯樹はタブレットを操作し、暗号化された電子ファイルを呼び出して、茜の前へ滑らせた。

「T細胞受容体遺伝子の標的再構築」

画面の生存率データの列を指でなぞりながら、淡々と言う。

「4か月前に第III相まで進んだ。被験者の中で生き残って、病変が完全に剥離できたのは……俺だけだ」

茜は医療を学んでいる。

その数字の裏にある凶険さが、一目でわかった。

「技術はまだ改良途中だ。量産して使える段階には程遠い」

佐伯樹は茜の表情を細かく...

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