第112章城のぬくもり

侍女はぱっと頬を染め、赤みがみるみるうちに頬を駆け上がった。小さく膝を折って一礼すると、ダックスの脇をすり抜けて隣の浴室へ急ぎ、もうひとりの召使いを呼びに行く。やがて二人は揃って慌ただしく出て行き、背後で扉を閉めた。

重いオーク材の扉がきい、と鳴って閉まり、その音が部屋の奥まで響いた。ベアは顔を上げ、炉の火が揺らめきながらダックスの面差しを照らすのを見つめた。

何を考えているのか訊きたかった。けれど、この瞬間はあまりに完璧だった。長いあいだ馬で旅を続けてきて、二人きりで静かに過ごす時間など許されなかったのだ。部屋の沈黙が、まるで生きもののように感じられる。ダックスがそこに立ち、彼女の目を見...

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