第113章身近な炎

――アイサ――

彼女は見覚えのある木の扉の前に立っていた。どこで見たのかは思い出せない。だが、それを目にした瞬間、皮膚の上をぞわりとした恐怖が走った。

それでも、最初に感覚をくすぐったのは匂いだった。強まっていく刺激に、くしゃみが出そうになる。けれど彼女はこらえ、手の甲で鼻先をこすり、そのまま前へ進んだ。手を伸ばし、取っ手を回そうとする。

(扉番はどこ?)と彼女は思った。(この扉の前にいるはずじゃないの?)

近づくほど匂いは濃くなる。だが、扉の下の小さな隙間から煙がするすると漏れ出してきて、ようやく彼女は自分が何を嗅いでいたのか理解した。

煙だ。

アイサは手を伸ばし、取っ手が掌を焼...

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