第143話血と雪の記憶

ミスタル――

都を出ようと進む彼女の頭上に、王都の城門がそびえ立っていた。背に当たる陽射しはやわらかく温かく、軽めの鎧を選んだ自分の判断に感謝した。南方にはまだ冬が本格的には降りてきておらず、風は晩秋の匂いを運んでくる。ありがたいことに街道は乾いていて、立ち止まるたびに馬の蹄や皮を気づかって手入れをする必要もない。

これから五日間は長い道のりになるだろう。北の城に辿り着くにも、少なくともそれだけの日数はかかる。最初の坂を上りきったところで、彼女は思わず足を止め、都を見下ろして振り返った。ここは暖かい。この容赦のある気候が恋しくなるに違いない。だが、もっと北――ダックスの領地へ着く頃には、雪...

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