第16話ダックスって呼んで

――ダックス――

ロンテルは身を翻し、背後の扉をゆっくりと閉めながら部屋を出ていった。

扉が閉まった途端、彼はベアがその場に膝をつくのを見た。そして、彼女が何度も深く息を吸う音が聞こえた。木の葉のように震えながら、彼女はひとりごとをつぶやいていた。

何を言っているのかまでははっきり聞き取れなかったが、自分はレディではないとか、自分の立場を忘れてはいけないとか、そんな断片的なつぶやきが耳に入った。

彼女がデイヴィッドにあそこまで立ち向かったことが、彼には信じられなかった。あの男のことは以前から嫌っていたが、新しい執事を育てる必要など感じたことはない。――今までは。

床にいるベアの姿を見...

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