第32章刃よりも深く切れる傷

――ダックス――

デイヴィッドが顔を寄せてくるあいだ、ダックスは黙したまま身じろぎひとつしなかった。デイヴィッドは大きく息を吸い込み、唾をダックスの頬へとぽたりと垂らした。冷たい液体がつうっと滑り落ち、首の付け根のくぼみにまで忍び込む。拭い去りたい衝動を、ダックスは必死で押し殺した。

(痛い目に遭わせてやる、小男め)内なる狼が、力を解き放ってこの病んだ男を膝から崩せと懇願してくる。だがダックスはそれを宥めた。レベッカを告発するための切り札として使うには、こいつを生かしておく必要があったのだ。

ベッドの周りを回り込む足音がする。ダックスは片目をほんの少しだけ開き、枕元の小卓に置かれた蝋燭の...

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