第39章親しみやすいからといって故郷とは限らない

――ベア――

小川沿いをどれほど走り続けたのか、彼女にはわからなかった。ただ、跳ねる水しぶきが肌を刺し、震えが止まらず、指先の感覚がじわじわと奪われていく。髪にも服にも凍りついた塊が点々とこびりつき、歯ががちがちと噛み合うせいで顎まで痛んだ。

忍び寄る痺れにできる限り抗い、髪を一房ずつむしり取っては地面へ落とした。だが視界は滲みはじめ、小川を離れる頃には、これまで耐えたことのない限界の向こうへ、身体を追い込んでしまっていた。

「もう一回……」そう繰り返しながら、引きちぎっては落とし、引きちぎっては落とした。何度も何度も。やがて眠りが彼女をさらい、腕が前へ崩れ落ちる。凍てついた指先が、とき...

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