第6章

高橋愛実視点

まさか自分がこんな場所に来ることになるなんて、想像もしていなかった。

クリスタルのシャンデリアが温かな光を投げかける会場を、高価な香水の雲とデザイナーもののドレスをまとった街の有力者たちが行き交う。

医療チャリティの華やかな会場では、誰もが成功と自信に満ち溢れていた。そんな中で私――一介の看護学生――は、山本翔さんの腕に手を絡ませ、彼の手のひらから伝わる温もりを感じていた。

「緊張してる?」翔が耳元で囁く。今まで聞いたことのないような、優しい声だった。

私は首を横に振ったけれど、心臓は胸から飛び出してしまいそうなほど激しく高鳴っていた。周りにいる権力者たちのせ...

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