第102章 母の過去

以前なら、小林邦彦が怒ったって、せいぜい一日二日で機嫌は戻った。なのに今回は四、五日経ってもまだ――あの人は家の中で、彼女たちと冷戦状態が続いている。

「もういいわ。放っておきなさい」

小林千代は苛立ちを押し殺すように言った。

津崎里実は死んだ。今さら小林邦彦が何をしようと、たかが知れている。自分が妊娠さえすれば、結局は戻ってくるはずだ。そうでなければ困る。

「お母さん。今日、お父さんが書斎でずっと片づけしてた。ここ数日、毎日そんな感じ。中で何してるんだろう」

「毎日……書斎で片づけ?」

小林千代の胸に、ひやりとしたものが落ちた。何か手を打っているのでは――。

「お父さんはまだ...

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