第29章 謎めいた過去

「孤児院の院長はもう死んだわ。だから葉山社長が当たったのは、あの人の息子。……面倒はごめんだって、私にそう言ってきたの」

小林雪乃は唇をきゅっと噛んだ。

あのとき渡した金は相当な額だった。しかも、院長の息子の弱みも握っていた。でなければ、小林茉由ばかりを贔屓していたあの院長が、自分に都合よく動くとは限らなかった。

当時、葉山墨也は雪乃の御守りを見ても、すぐには信じなかった。孤児院の院長に裏を取ったのだ。

だが幸いにも、そのころ院長の息子は不祥事で捕まっていた。雪乃は相当骨を折り、院長に「幼い頃、墨也を助けたのは雪乃だ」と認めさせた。

――それなのに。

葉山墨也が、またあの件を洗い...

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