第60章 からかおうとして逆にからかわれる

葉山墨也の瞳に、かすかな悔恨が走った。五年前――小林雪乃が「流産した」と騒いだ一件で、彼は小林茉由の首を絞めかけた。

だが、今になって分かった。あれは最初から最後まで、小林雪乃が仕組んだ罠だったのだ。

……いいだろう。

あの女、ずいぶん長いこと俺を踊らせてくれたじゃないか。

「それと、まだ少し……」桐谷辰哉が追加の資料を取り出した。「津崎広吉に関するものです」

彼は読み上げるのをためらっている。

「言え」

桐谷辰哉は小さくうなずき、ようやく口を開いた。

「数年前の、葉山夫人が浮気現場を見た件、覚えていらっしゃいますか。あれも小林雪乃の仕込みでした。当時、津崎広吉が小林茉由さん...

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