第73章 恩知らずを育ててしまった

「そ、それは……」桐谷辰哉は言いよどんだ。小林茉由の本当の身分など、口が裂けても言えるはずがない。二人の仲がどれほど険悪だったか、知らないわけでもないのだ。

逡巡した末、桐谷辰哉はやはり葉山夫人に真実を告げなかった。

「社長が新しく迎えた著名なデザイナーでして……現在は東和グループで社長を務めております」

「じゃあ、どうしてそんな女がここにいるの?」葉山夫人は小林茉由を見る目をいっそう険しくする。女のデザイナーなどいくらでも見てきた。肩書きを盾に上へ取り入ろうとする手合いも。――この女は、どうにもそういう匂いがする。

「社長のご判断です」桐谷辰哉は額に汗を浮かべた。社長はいつ会議を終...

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