第86章 私たちは手を組む

葉山墨也の目つきが、すっと陰った。――この忌々しい女。ほんと、隙あらば人を煽ってくる。

小林茉由も危険を察し、反射的に離れようとする。だが、ドアへ辿り着く前に腕を掴まれ、引き戻された。

「どこ行く」

葉山墨也は彼女を扉に押しつけ、そのまま唇を塞いだ。

熱を孕んだキスは、まるで丸ごと呑み込むみたいで――息が奪われる。

「葉山墨也、ふざけないで! ここ外……!」

小林茉由が拳で胸を叩く。だが男は一瞬だけ動きを止め、はっとしたように距離を取った。

「悪い」

どこか困ったような声で、彼は肩をすくめる。

「分かってるだろ。……この五年、俺のそばに他の女はいなかった。ちょっと、我慢が利...

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