第92章 あなたの母親の身分

葉山墨也の瞳が、すっと陰る。柔らかな感触が触れた瞬間、胸の奥で悪態が弾けた。

――この女……寝てる間まで落ち着きがない。

身を屈め、少し懲らしめてやろうとした、そのとき。

唇が触れる寸前、スマホが唐突に鳴り響いた。

「……チッ」

葉山墨也は小林茉由をそっと押し退けると、ベッドを降りて少し離れた場所で通話に出た。

「葉山社長。ご依頼の件、手がかりが出ました」

墨也は、まだ眠っている茉由を一度だけ振り返り、そのまま部屋を出て書斎へ向かう。

「何が出た」

「小林さんと千崎良介の関係は掴めませんでした。ただ、小林さんの母親については……身元が、かなり厄介です。津崎里実という名前は本...

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