第103章

葬儀場内、多くのスタッフが慌ただしく行き来していた。一人の女性が不機嫌そうに近づいてきた。

「ここに何か御用でしょうか?」

葬儀場に来る人間と言えば、遺族か死者くらいのもの。当然、機嫌がいいわけがない。

鈴木夏美は率直に用件を伝えた。

「佐藤安奈の遺体はまだありますか?」

「先日運ばれてきた女の子のことですか?」スタッフは二人を上から下まで眺め、ようやく嬉しそうな表情を見せた。

「これだけ日にちが経っても誰も遺体を引き取りに来なかったんですよ。あと少し遅かったら、処理するところでした」

迷わなくて良かった。

鈴木夏美は急いで口を開いた。

「遺体を引き取りに来たんです。葬儀費...

ログインして続きを読む